ビジネスモデルそのものに競争優位が生まれる時代へ

昨今主要メディアでも取り上げられるようになったSDGs。

日本でも認知度が徐々に拡大しつつありますが、同時にその捉え方は様々です。CSRみたいなもんでしょ?と捉えている経営者も多いですし、一概に間違っているとも言えないのですが、一つだけ気になる点としては「流行り」のような感じで一過性のブームのようなものと捉えている方がいたら、それは訂正していかなければならないと思っています。
 
今回は、事業領域とビジネスモデルについてお話をしますが、まずその事前知識として重要な要素となるSDGsについて、ちょっとだけ触れておこうと思います。
以前、こちらのサイトのブログでも紹介させていただきましたので、そちらもあわせてご参考にしてください。
 
 

 

敵も味方も、皆が目標とできるSDGs

最近になってようやくメディアでも大きく取り上げられるようになったため、一時期の流行りっぽく捉えられてしまうのも仕方ないと思いますしメディアとはそういうものだと思うのでそれが悪いことでも無いのですが、大切観点はSDGsは全世界共通で「利害関係を超えた共通目標」であることです。これは実はこれまで存在しなかった、結構画期的なことなんです。
 
「利」は良いとして「害」の関係と共通認識を持てる、ということが非常に大切で、例えば、ライバル企業と価格競争に陥った時に、環境に悪影響が出る方法でライバルより安く生産、販売したとします。
通常なら、何も知らない消費者は同じような製品が安く手に入るなら喜んでそっちを買いますよね。
ところが、そうした事実が内部告発で世の中に広まったらどうでしょう。
 
ネット上で炎上し、メディアでは叩かれ、投資家サイドからも厳しい評価を受け、結果的に事業の撤退を余儀なくされる、ということになりかねません。
 

ビジネスモデルが評価される時代に

事業活動にはかならずインプットとアウトプットが存在し、その中間に位置するものがビジネスモデルと呼ばれる事業のエンジンです。
 
ビジネスモデルは「自社」を中心に置いて、その周辺にステークホルダーと呼ばれる「お客様」「投資家」「競合」などのプレイヤーをおき、矢印で関係性を説明します。
 
そのステークホルダーはこれまで大体「目に見える相手」だったんですが、最近では「地球の裏側」みたいな目が届かないステークホルダーまで見据えて事業活動を持続可能なものとしているか、という非常に多角的な視点が求められるものになりつつあります。
 
 

地球環境との共存を前提にしたアップルのビジネスモデル

例えば、誰もが知っているアップルのビジネスモデルを見てみましょう。
 
iPhoneは間違いなく優れた製品ですし、使ったことのあるユーザーならその使い易さ、安定性、所有の喜びを満たす審美性など、アウトプットのレベルの高さは言うまでもありません。
もちろん、マーケティング活動も丁寧に行っていますし、売れる理由は十分あります。
 
 
しかし、実はアップルはアウトプットだけではなくビジネスモデルそのものにも工夫とノウハウが詰まっています。
こちらのページ中ほどにある動画をご覧下さい。
 
 
 
彼らはすべての製品を再生可能なアルミニウムで生産し、排出するCO2を管理し、自然エネルギーと環境保護活動を通じてカーボンニュートラルを実現しようと取り組んでいます。
 
iPhoneという製品を評価してもらうことはもはや当然なんですよね。投資家から評価されている点はiPhoneの機能や売上ではなく、実はこのビジネスモデルであり、アップルの高株価維持に大きく貢献しているという事実は、実はあんまり知られていません。
 
 

ビジネスモデルをいかに評価するか

ビジネスモデルの可視化は簡単ではありません。複雑に入り組んだステークホルダーマップを作成し、事業活動に伴う影響具合を定量的に出そうとしたらどこぞの学会が発表する論文レベルの資料になります。
 
もちろんその資料を作成することは素晴らしいことなのですが、投資していたり家族がその会社に勤務しているなど、何かしら関心がないとなかなかじっくり目を通してその企業のビジネスモデルにまで興味を持つことは難しいでしょう。
 
 
ビジネスを初めて間もない時はビジネスモデルだけを立派に考えても本当にそうなるかは不確定要素だらけでしょうし、素晴らしいアイデアがあってもキャッシュフローが回って継続した活動が可能な状態にならなければビジネスとは呼べません。
 
企業として競争力を高めて、ブランド認知が進んだ段階までくると、より大きなインパクト(環境負荷の低減を含めたSDGsの達成)に向けて資金ニーズが高まり、資金調達の方法を検討することとなります。
 
そうなるとVCやCVCからのエクイティ、社債や金融機関からのデットなどファイナンス戦略が重要になるタイミングで、ビジネスモデルの優位性が問われ始めます。
 
ファイナンス戦略については一冊の本になってしまうレベルの長い話になるのでここでは割愛しますが、資金の調達方法を誤ると事業の競争力を弱めるどころか、出資者への報告義務に追われ、やりたいことがやれなくなったり、下手をすると取締役会で退任を求められたり、事業活動そのものが停止するなど完全な負のスパイラルに陥ります。
 
さて、長くなってきたのでひとまず今回はここまでにしましょう。
 
 
次回はビジネスモデルの評価を通じた資金調達の具体的な方法について、解説していきたいと思います。