助成金の申請時に事業評価が求められる時代へ ~非営利団体の対応策~

非営利団体にとって、会員からの会費や賛同者からの寄付金に加えて、助成金とクラウドファウンディングも不可欠な資金源となっている団体も少なくありません。
 
助成金は、平成30年3月に内閣府が発表した「社会的事業に対する資金提供実態に関する調査」からも、金額の増加傾向が確認できます。
 
 
ここで、一つ注目する点として同調査において、「社会性をより評価する仕組みを有する」資金提供金額が、平成26年度が149億円、平成27年度が207億円(前年度比38.8%増)、平成28年度が216億円(前年度比4.3%増)と徐々に増加している点です。
 
 
 
ここでは、この増加傾向にある「社会性を評価する仕組み」について、記載いたします。
 

【①評価が可能な対象とする】計画に測定不可能な要素を入れない

資金調達をする際に助成金に申請するか、クラウドファンディングに挑戦するか、悩む場合は少なからずあると思います。
 
どちらが正解ということはありませんが、一つの目安として、少額のプロジェクトの場合はクラウドファンディングの相性が良いとされています。
例えば、『子供のためのフリースクールのエアコンが壊れて困っています!子ども達に快適な環境を!』などで、エアコン購入費として20万円募る、などといった場合は、明らかな用途、少額での達成、共感のしやすさから、応募時期も募集期間も自由なクラウドファンディングが向いています。
 
 
それに対し、民間の助成金は応募時期は年に1回、助成期間も1〜3年とそれなりに長いものが多いため、いわゆる事業計画が必要になります。
 
計画には将来の不確定要素が含まれるため、その不確定要素に対する検証が可能かどうかが審査の上で一つのポイントになります。
例えば、対象者やエリアがはっきりした事業だとある程度観測が可能なため、効果検証がしやすいです。
対して、「高齢者がイキイキと生きがいを感じるようになる場を創る」といった事業計画を作った場合、その成果を測るのは難しくなります。
 
「〇〇市における定年を迎えた高齢男性の引きこもりを減らす」というような具体的な定量調査が可能な対象範囲に絞り、何人引きこもりを脱したかを図れるように事業を組み立てることが必要になります。
 
 
このように、不特定多数の「顔が見えない対象者」や、広範過ぎる「境界線が無いエリア」は、評価検証時につまづくことが多いため、評価が求められる計画の目的は、対象範囲を絞ることが大切です。
 
 

【②評価を見える化する】評価を測る成果指標を持つ

非営利団体の『事業評価』とは何なのでしょうか。
 
株式会社なら利益額や利益率、ROIなどの指標が存在しますが、非営利団体にとっては正式な成果指標はありません。
 
例えば、日本財団が公示している事業評価の視点がこちらに記載されておりますので、ご興味ある方はご参照下さい。
 
 
現状は、評価する者が相対的に定量・定性的に比較検討する形で審査しています。
※もちろん、評価する側も専門的知識を有した方たち複数人で評価するため、なるべく不公平がないよう評価しています。
 
しかし、この『事業評価』は諸刃の剣の側面もあります。
例えば、子ども食堂を作るとした団体が、成果指標を(食数)とした場合、本来受け入れたいはずの孤食の子供に対してリーチが疎かになり、規模だけを追う活動になってしまいます。
 
子ども食堂には、食事を通じて心のケアや子どもに必要な支援への橋渡し、多様な大人への理解など、多面的な効果が期待されるため、どうやって成果指標を取り入れればよいのかわからず、主催者側が困惑してしまうケースがあるのも事実なのです。
 
評価基準は客観性に欠けてはいけませんが、第三者(助成側など)が決めると、現場の声や事業主の思いとは離れた、数値的な(ドライな)評価基準となってしまいます。
 
ゆえ、事業主の思いに寄り添いながら客観的な評価基準を構築していく必要があります。
そうした複数の成果指標に基づき、アンケート調査や、定量調査を事業の途中で行うようにします。
 
 

【③評価を成長に繋げる】事業のPDCAサイクルを回す仕組みをつくる

クラウドファンディングなどの個人の賛同者を募るなら、事業の評価や検証という観点はあまり求められません。あくまで個人がその活動を応援したいか、否かで決まります。
 
しかし、助成金の審査で頭一つ抜きんでるには、事業をマネジメントする体制があることを事業計画にしっかりと記載する必要があります。よく「体制図」を書く欄がありますよね。
その図の中に、事業評価をする体制、すなわち事業のPDCAサイクルを回す仕組みがあることを事業計画に記載します。
 
非営利団体の活動では、PDCAのうち、C(チェック)まで手が回っていない団体も少なくありません。
 
しかし、このC(チェック)こそが『事業評価』の出発点であり、その結果を踏まえて改善活動をしているという流れが、PDCAサイクルが回っているということです。
 
助成金に申請する際の事業計画を作る上で、是非この3つの視点を持って取り組んで見てください。
 
また、その評価基準を構築する際には、一人の視点のみならず、事業主の方などの主観的な思いと、客観的なアドバイザーからの視点の両面を取り入れて、評価体制を作ることをお勧めします。